2020年11月6日金曜日

11月は、児童虐待防止推進月間です。

ここ数年、児童虐待に関する相談件数は全国的に増えています。

憂慮しないといけない状況であることは確かです。

ただ、報道をみると、児童虐待=犯罪ととらえているようなことがよくみられます。

小児科医としては違和感を感じます。


もちろん、子どもに傷をつけたり、命を奪ったり、心理的なダメージをあたえたりといったことは決して許されることではありません。

しかし、その裏にはさまざまな事情があったためにこのような不適切な養育(マルトリートメントといわれています、児童虐待よりもこちらの言葉の方が犯罪というイメージを一掃できるかもしれません)につながったわけで、犯罪ととらえて裁判にかけられても根本の要因の解決は全くされず、今後の生活をどう改善するかという問題は残ったままです。


私はかつて横浜市児童虐待防止医療ネットワークという横浜市の要保護児童対策地域協議会の下部組織で横浜市の小児科拠点病院・児童相談所・横浜市で連携して児童虐待をなんとか医療の立場で予防しましょうという会の責任者を2年ほどしていました。

その際も、虐待に対して目をそらさず積極的に発見しようという医師は多くなり、見て見ぬふりをしないで協力体制ができてきているといった点では以前よりたけてきていました。しかし、発見したあとどのようにフォローしていくかといった話になると医療から手が離れるので児童相談所や子ども家庭センターにおまかせという考えが医師には多かったです。これでは根本にメスが入らないわけで、私はこのネットワークに児童精神科の方に入っていただきなんとか発見してから親子ともに心理的なフォローアップまでできればと思ってまとめてきました。しかし、思い半ばで町田で開業したのであとは横浜の諸先生方に託しました。


家庭内での児童虐待の裏には、母もしくは父が一人で養育をかかえてしまい相談できる人がいないことが多くあります。加えて、母・父も人間ですから、自分たちの幼少期の育ちのときの思いが自分の子供を育てることでフラッシュバックしていろいろ考えさせられるはずです。フラッシュバックするものが楽しい場面ならばよいのですがつらい場面だとしたら、その思いを誰にどのように表現すればよいかわからなくなります。それが子供に向いてしまっての出来事だとしたら、今度はご両親自らに怒りが向かい自らを許せなくなり、どんどん両親は追い詰められていきます。虐待という事象を犯罪として悔い改めさせることも重要ですが、心理的なフォローが重要なのです。薬物中毒も同様に犯罪としてだけでなく治療や援助が必要と最近言われていますよね。それと同じことです。

身近なママ友でもよいですし、知り合いが嫌ならば町田市の地域子育て相談センター などに相談してみるのもよいでしょう。加えて、身近なかかりつけ医に相談されてもよいと思います。小児科クリニックは、コロナの今でこそ患者さんが減りましたが、風邪がはやるととても忙しくなって相談どころではないと思われるかもしれません。その場では相談できなくても時間を別にとって話すことはできますし、医師は医師会や市の担当者と連携があるので応援団を広げることができます。

誰かにSOSを伝える勇気がマルトリートメント(不適切な養育)を回避し、児童虐待への進展を阻止することにつながります。

また、社会全般に虐待=悪といった考えよりも、「虐待をみたら支援を」といった考えにシフトしていくことで、SOSをより出しやすい環境ができるのだと思います。


児童虐待は、決して他人事ではありません。

11月は毎年児童虐待防止推進月間ですが、11月だけではなく常に社会で考えていかないといけませんね。